牛のホルモン:美味しい部位と下処理方法

肉情報

牛のホルモン:美味しい部位と下処理方法・まとめ

ホルモンとは

ホルモンとは、一般的に食肉用として流通している「正肉」以外の部位、すなわち内臓や血管、軟骨などを指します。焼肉店などで提供されることが多いですが、家庭でも手軽に調理できる食材として人気があります。

牛のホルモンは、その多様な食感と風味から、多くの食通を魅了しています。弾力のある歯ごたえ、濃厚な旨味、そして独特の香りは、一度食べると病みつきになる人も少なくありません。部位によって調理法や味わいが大きく異なるため、それぞれの特徴を理解することで、より一層ホルモン料理を楽しむことができます。

美味しい部位とその特徴

  • テッチャン(大腸)
  • 最もポピュラーな部位の一つ。厚みがあり、脂が乗っています。噛むほどに旨味が広がり、ジューシーな食感が楽しめます。網脂が付いているものを選ぶと、さらにコクと風味が深まります。焼肉の定番であり、様々なタレとの相性も抜群です。

  • ハチノス(第二胃)
  • 蜂の巣のような網目状の構造が特徴。独特の食感があり、プルプルとした弾力と、噛むとじんわりと染み出す旨味が魅力です。煮込み料理やもつ鍋に最適で、スープの旨味を吸い込み、一層美味しくなります。比較的高価な部位でもあります。

  • センマイ(第三胃)
  • 数多くのひだ状のヒダを持つ部位。シャキシャキとした独特の歯ごたえが特徴で、淡白ながらも上品な旨味があります。一般的には湯通しして、冷ややっこや和え物のようにして食べることが多いですが、焼肉にしても美味しくいただけます。鮮度が命の部位です。

  • シマチョウ(小腸)
  • テッチャンよりもさらに脂が多く、とろけるような食感が特徴。噛むと口の中に旨味と脂が溢れ出し、濃厚な味わいが楽しめます。焼肉で提供されることが多いですが、油分が多いため、煮込み料理にすると脂が適度に抜けて食べやすくなります。

  • アカセン(第四胃・ギアラ)
  • 牛の胃の中でも最も肉厚で、赤身と脂身のバランスが良い部位。しっかりとした歯ごたえと、噛むほどに増す旨味が特徴です。脂は比較的あっさりとしており、焼肉はもちろん、煮込み料理や炒め物にも適しています。

  • タン(舌)
  • 「ホルモン」として扱われることもありますが、厳密には筋肉組織です。タン元、タン中、タン先と部位が分かれ、それぞれ食感や旨味が異なります。タン元は厚みがあり、タン中は旨味が濃く、タン先はさっぱりとしています。焼肉では定番中の定番で、独特の風味と食感を楽しめます。

  • ミノ(第一胃)
  • 牛の胃の中で最も外側にある部位。弾力のある歯ごたえが特徴で、淡白ながらも噛むほどに旨味が出てきます。ミノサンドと呼ばれる、ミノの間に脂が入った部位は特に人気があります。焼肉では、表面をカリッと焼くのがおすすめです。

  • 心臓(ハツ)
  • 栄養豊富で、比較的高タンパク低脂肪な部位。コリコリとした歯ごたえが特徴で、臭みが少なく、あっさりとした味わいです。焼肉や串焼きに最適で、ハーブやスパイスとの相性も良いです。鮮度が重要で、新鮮なものはクセがなく美味しくいただけます。

  • レバー(肝臓)
  • 鉄分やビタミンAが豊富。クリーミーで濃厚な味わいが特徴ですが、特有の風味があるため、好みが分かれることもあります。新鮮なレバーは、ごま油や塩でシンプルにいただくのがおすすめです。焼く場合は、表面をさっと炙る程度にするのが一般的です。加熱しすぎるとパサついてしまうため注意が必要です。

下処理方法

ホルモンは、独特の風味や臭み、そして脂分が多いため、下処理を丁寧に行うことが美味しく食べるための鍵となります。家庭でできる一般的な下処理方法を以下に示します。

1. 洗浄

まず、流水で表面の汚れを丁寧に洗い流します。特に、内臓の周りについた余分な脂肪や血合いなどを取り除くようにします。

2. 臭み取り

臭みの原因となる余分な脂肪や筋、血合いなどを包丁で丁寧に切り取ります。脂が多すぎる場合は、適度に削ぎ落としましょう。特に、胃袋の周りについた白い脂は、取り除かないと臭みの原因になります。

また、臭み消しのために、以下の方法が有効です。

  • 牛乳に漬け込む
  • ホルモンを牛乳に30分〜1時間ほど漬け込むことで、臭みやアクを吸い取ってくれます。その後、水でよく洗い流します。

  • 日本酒に漬け込む
  • 牛乳と同様に、日本酒に漬け込むことでも臭み消し効果があります。

  • 生姜やニンニクと一緒に茹でる
  • 水からホルモンと、スライスした生姜やニンニク、ネギの青い部分などを入れて数分茹でます。アクが出たら丁寧にすくい取ります。この下茹でで、ある程度の臭みと脂を落とすことができます。

3. 下茹で(※部位による)

テッチャンやシマチョウなど、脂の多い部位や、しっかり火を通したい部位は、下茹でをすることをおすすめします。たっぷりの水に、昆布や生姜、ネギなどを入れて、弱火でじっくりと茹でます。アクが出たらこまめにすくい取ります。茹で加減は、竹串がスッと通るくらいが目安です。茹ですぎると食感が悪くなるので注意が必要です。

ハチノスやセンマイなどは、独特の食感を活かしたいので、下茹では短時間にするか、湯通し程度で十分な場合もあります。

4. 水で冷やす

下茹でをした後は、冷水でしっかりと冷やします。これにより、余分な脂が固まり、取り除きやすくなります。また、食感が引き締まります。

5. 食べやすい大きさにカット

下処理が終わったら、食べやすい大きさにカットします。焼肉用であれば、一口大に。煮込み用であれば、やや大きめにカットしても良いでしょう。

6. 下味付け

カットしたホルモンに、お好みで下味をつけます。焼肉用であれば、醤油、みりん、酒、ニンニク、生姜などを混ぜたタレに漬け込んだり、塩胡椒を振ったりします。煮込み用であれば、そのまま調理しても良いですし、軽く下味をつけても良いでしょう。

調理のポイント

  • 強火で短時間
  • 焼肉で調理する場合、強火で短時間で焼き上げることが、旨味を閉じ込め、ジューシーに仕上げるコツです。焼きすぎると硬くなってしまうので注意しましょう。

  • 網脂を活かす
  • テッチャンなどに付いている網脂は、旨味とコクの源です。焦げ付きやすいので注意しながら、適度に炙って脂を溶かし出すように焼くと美味しくなります。

  • 煮込み料理
  • ホルモンは煮込み料理にも最適です。野菜や他の具材と一緒にじっくり煮込むことで、ホルモンが柔らかくなり、スープの旨味を吸って格別な味わいになります。もつ鍋やホルモンうどんなどが代表的です。

  • 臭みが気になる場合
  • 調理後も臭いが気になる場合は、スパイス(クミン、コリアンダーなど)やハーブ(ローズマリー、タイムなど)を効果的に使うと、風味が豊かになり、臭みをマスキングできます。

まとめ

牛のホルモンは、部位ごとに全く異なる食感と風味を持つ魅力的な食材です。テッチャン、ハチノス、センマイ、シマチョウ、アカセン、タン、ミノ、ハツ、レバーなど、それぞれの特徴を理解し、適切な下処理を行うことで、家庭でも専門店に負けない美味しいホルモン料理を楽しむことができます。洗浄、臭み取り、下茹でといった丁寧な下処理が、ホルモンを美味しく食べるための第一歩です。焼肉にするのか、煮込みにするのか、あるいは他の調理法を選ぶのかによって、下処理の方法や調理のポイントも変わってきます。ぜひ、色々な部位のホルモンに挑戦して、その奥深い世界を堪能してみてください。