ハツモト
焼き鳥屋や焼肉屋のメニューで見かける「ハツモト」。
「ハツ(心臓)とは何が違うの?」「どんな味?」「希少部位なの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
ハツモトは、通の間では「一度食べたら病みつきになる」と言われるほど、味と食感のバランスが絶妙な部位です。
この記事では、ハツモトの正体から、別名の謎、美味しい食べ方まで解説します。これを読めば、次にお店でハツモトを見つけた時、迷わず注文したくなるはずです。
1. ハツモトとは?その正体と部位を詳しく解説
まずは「ハツモトが一体どこの肉なのか」という疑問を解決しましょう。
心臓と肝臓をつなぐ「大動脈」
ハツモトはその名の通り、「ハツ(心臓)」の「モト(根元)」にある部位です。
具体的には、心臓から出ている「大動脈」という太い血管の部分を指します。鶏の場合、心臓と肝臓(レバー)をつなぐ管のような役割を果たしているため、内臓を切り分ける際に「残ってしまう部分」という意味合いも含んでいます。
「ハツ」との決定的な違い
「ハツ」は心臓の筋肉そのものです。そのため、食感は弾力があり、味は脂が少なくあっさりしているのが特徴です。
一方で「ハツモト」は血管の組織。筋肉よりも「コリコリ」とした軟骨に近い歯ごたえがあり、血管の周りには適度な脂が付着しているため、ハツよりも濃厚でジューシーな味わいが楽しめます。
いわば、ハツの「肉々しさ」と、ホルモンの「脂の旨味」をいいとこ取りした部位、それがハツモトなのです。
2. 食べた瞬間に虜になる!ハツモトの味と食感
ハツモトを語る上で欠かせないのが、その独特な「二面性」を持つ食感と味わいです。
食感:コリコリとプルプルの共演
ハツモトを口に運ぶと、まず驚くのがその食感です。
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血管部分: 噛むと「コリッ」「サクッ」とした、小気味よい抵抗感があります。
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周囲の脂身: 血管の周りにはハツから続く良質な脂が付いています。これが口の中で「プルッ」ととろけます。
この「コリコリ」と「プルプル」が同時にやってくる感覚は、他の部位ではなかなか味わえません。砂肝ほど硬くなく、かといってレバーほど柔らかすぎない、絶妙なバランスが魅力です。
味:内臓肉のコクと脂の甘み
ハツモトは、ハツよりも脂がのっています。そのため、噛むほどに脂の甘みが口の中に広がります。
それでいて、内臓特有の臭みは比較的少なく、レバーが苦手な人でも「ハツモトなら食べられる」というケースも少なくありません。ハツよりもコクがあり、お酒が進む「パンチの効いた味」と言えるでしょう。
3. なぜ「幻」と呼ばれる?ハツモトの希少性と価値
メニューに「数量限定」や「本日入荷」と書かれていることが多いハツモト。なぜそれほどまでに希少なのでしょうか。
1羽から数グラムしか取れない
鶏の場合、ハツモトは心臓の根元にあるほんの数センチの血管です。1羽の鶏から取れるハツモトは、わずか数グラム。
焼き鳥1本を作るためには、なんと8羽〜10羽分もの鶏が必要になります。
このため、大量に仕入れることが難しく、個人経営のこだわりの焼き鳥店や、特定のルートを持つ焼肉店でしか出会えない「レアキャラ」となっているのです。
下処理に手間がかかる
希少性を高めているもう一つの理由が、その「下処理の難しさ」です。
血管内部には血塊が残りやすく、これを丁寧に取り除かないと臭みの原因になります。また、脂の残し具合によって味が大きく変わるため、職人の腕が試される部位でもあります。
「手間がかかる割に取れる量が少ない」ため、チェーン店などではあまり取り扱われない、まさにプロのこだわりが詰まった部位なのです。
4. 混乱しやすい「別名」を整理しよう
ハツモトは、お店や地域、動物の種類によって呼び名がバラバラです。「これってハツモトと同じもの?」と迷わないように整理しておきましょう。
焼き鳥店(鶏)での呼び名
鶏のハツモトは、その形状や位置からユニークな名前で呼ばれます。
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こころのこり: 「心臓(こころ)」を切り離した際に「残る」部分、または「心臓の後ろ髪を引かれる(残り)」という意味でこう呼ばれます。最もポピュラーな別名です。
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ハツヒモ: 血管が紐のように見えることから。
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つなぎ: 心臓と肝臓を「つなぐ」場所にあるため。
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赤ひも: 血管の色からそう呼ばれることがあります。
焼肉店(牛・豚)での呼び名
牛や豚のハツモトも大動脈ですが、呼び方が変わります。
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コリコリ: そのまんまの食感から。
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カンチュウ(管中): 血管(管)の中、という意味。
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タケノコ: 見た目の形状や、食べた時の「サクッ」とした食感がタケノコに似ているため。
基本的には、これらはすべて「大動脈(およびその周辺)」を指していると考えて間違いありません。
5. ハツモトを最高に美味しく食べる方法
もしお店のメニューにハツモトを見つけたら、どう注文するのが正解でしょうか?
「タレ」か「塩」か、それが問題だ
結論から言うと、どちらも正解ですが、楽しみ方が異なります。
| 味付け | こんな人におすすめ | 理由 |
| タレ | 旨味とコクを重視したい人 | ハツモトの脂は甘みが強いため、甘辛いタレと相性抜群。脂とタレが絡み合い、濃厚な味わいになります。 |
| 塩 | 食感と素材を味わいたい人 | 特有のコリコリ感をダイレクトに楽しめます。レモンを絞れば、脂の重さをリセットして何本でも食べられます。 |
まずは「塩」で食感を楽しみ、2本目に「タレ」で脂の旨味を堪能する、というリレー形式もおすすめです。
合わせるお酒は?
ハツモトは、ハツ(心臓)譲りの「適度な弾力」と、血管周りの「濃厚な脂の旨味」を併せ持つ、非常にお酒が進む部位です。
味付けが「塩」か「タレ」かによって、ベストマッチするお酒が変わります。それぞれの相性を詳しく解説します。
「塩」のハツモトに合わせるなら:爽快感と酸味
塩で焼いたハツモトは、独特のコリコリ感と脂の甘みがダイレクトに楽しめます。お酒は「脂を流すキレ」や「酸味」のあるものがおすすめです。
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レモンサワー / ジンソーダ
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脂ののったハツモトに、柑橘の酸味は鉄板の組み合わせです。口の中をリセットし、次の一口を誘います。
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強炭酸ハイボール
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ウイスキーの樽の香りが、内臓特有のわずかなクセを華やかな香りに変えてくれます。特に「角」や「デュワーズ」などのスッキリ系が合います。
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辛口の日本酒(純米酒・本醸造)
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キリッと冷やした辛口のお酒は、脂をスッと切ってくれます。
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おすすめ銘柄例:ばくれん(山形)、日高見(宮城)
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2. 「タレ」のハツモトに合わせるなら:コクとふくよかさ
甘辛いタレとハツモトの脂が混ざり合った濃厚な味わいには、「お酒自体の旨味」が強いものが負けずに調和します。
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赤ワイン(ミディアムボディ)
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意外かもしれませんが、タレの醤油・砂糖のコクは赤ワインのタンニンと相性抜群です。ピノ・ノワールなど、重すぎないものがベスト。
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芋焼酎(ソーダ割り・ロック)
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芋特有のふくよかな甘みが、タレの甘辛さと共鳴します。ソーダ割りにすると、濃厚な脂を軽やかに楽しめます。
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おすすめ銘柄例:黒霧島、富乃宝山
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旨口の日本酒(山廃仕込み・生原酒)
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お米の旨味がしっかりした、少し黄色みがかったようなお酒。タレの濃さに負けないパワーがあります。
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おすすめ銘柄例:菊姫(石川)、神亀(埼玉)
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3. 迷ったらこれ!ハツモト専用「最強ペアリング」
ハツモトのポテンシャルを最大限に引き出す、編集部(AI)イチオシの組み合わせをまとめました。
| 味付け | おすすめのお酒 | 理由 |
| 塩 | クラフトビール(IPA) | IPAの強い苦味が、ハツモトの良質な脂の甘みを引き立て、後味を最高に爽やかにします。 |
| タレ | 濃いめのハイボール | 炭酸で脂を流しつつ、ウイスキーの濃いコクがタレの旨味とぶつかり合って、最高に「飲ませる」組み合わせに。 |
4. 通の楽しみ方:温度帯を意識する
ハツモトは脂が多い部位なので、お酒の温度にもこだわるとさらに美味しくなります。
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冷たいお酒: 脂の重さを感じさせず、食感をシャキッと楽しみたい時に。
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ぬる燗: タレのハツモトを食べる時、お酒を少し温めると、口の中でハツモトの脂がより滑らかに溶け出し、旨味が爆発します。
6. 自宅でハツモトを楽しむための下処理のコツ
もし精肉店などで「ハツ付きのハツ」を手に入れたら、自宅でもハツモト(つなぎ)を楽しむことができます。
ステップ1:切り離し
心臓の頭の部分についている、管状の組織を包丁で切り離します。
ステップ2:血抜き(重要!)
血管の中に固まった血が入っていることがあります。竹串や指を使って押し出したり、ボウルに張った塩水の中で優しく揉み洗いをしてください。このひと手間で、臭みが全くなくなります。
ステップ3:水分を拭き取る
洗った後はキッチンペーパーでしっかり水分を拭き取ります。水分が残っていると、焼いた時にベチャッとしてしまい、せっかくの食感が損なわれます。
まとめ:ハツモトは「食の宝探し」
ハツモトは、1羽からわずかしか取れない、まさに**「職人が繋ぐ希少な贈り物」**です。
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正体: 心臓の根元にある「大動脈」
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魅力: コリコリの食感と、ハツより濃厚な脂の旨味
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希少性: 1串に8〜10羽分が必要な超希少部位
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別名: こころのこり、つなぎ、ハツヒモ、コリコリなど
次にお店へ行った際、もしメニューに「ハツモト」や「こころのこり」の文字を見つけたら、それは幸運な出会いです。売り切れてしまう前に、ぜひその独特の歯ごたえと溢れる旨味を体験してみてください。
一度その味を知ってしまえば、あなたも「ハツモト探し」が趣味になってしまうかもしれません。