牛タン:家庭で楽しむ本格厚切りレシピと下処理

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家庭で楽しむ本格厚切り牛タンレシピと下処理

「牛タン」と聞くと、焼肉店で提供されるような、噛み応えがありジューシーな厚切り牛タンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、家庭で厚切り牛タンを美味しく調理するのは難しいと思われがちです。この記事では、家庭でも本格的な厚切り牛タンを味わえるよう、丁寧な下処理方法から、おすすめの調理レシピ、そして美味しく仕上げるためのコツまでを詳しく解説します。

牛タンの部位と特徴

牛タンは、牛の首の部分にあたる肉で、その中でもさらにいくつかの部位に分けられます。一般的に、焼肉店で提供される厚切り牛タンとして親しまれているのは、「タン元」「タン中」「タン先」のいずれか、またはそれらを組み合わせたものです。それぞれの部位には特徴があり、食感や味わいが異なります。

タン元

牛タンの付け根に近い、最も厚みがあり柔らかい部位です。肉質はきめ細かく、脂の乗りも良いのが特徴。厚切りにすることで、そのジューシーさととろけるような食感を最大限に楽しめます。ステーキや厚切り焼肉に最適です。

タン中

タン元とタン先の間の部位で、程よい歯ごたえと旨味があります。厚切りでも比較的火が通りやすく、焼肉やステーキに向いています。タン元に比べるとややしっかりとした食感ですが、旨味も十分です。

タン先

牛タンの先端部分で、他の部位に比べてやや硬めで、旨味が凝縮されています。薄切りにして焼肉にしたり、細かく刻んでテールスープの出汁を取るのに使われることもあります。厚切りにする場合は、下処理を丁寧に行うことが重要です。

家庭で厚切り牛タンを美味しく調理するための下処理

厚切り牛タンを家庭で美味しく調理するには、丁寧な下処理が不可欠です。特に、臭みを取り除き、食感を良くするために、以下のステップを丁寧に行いましょう。

1. 表面の掃除と薄皮の剥ぎ取り

購入した牛タンの表面には、血合いや余分な脂肪が付いていることがあります。まず、キッチンペーパーなどで表面の水分を拭き取り、包丁の背などで表面を軽くこすりながら、血合いや硬い部分を取り除きます。続いて、牛タンの表面を覆っている薄皮(タン皮)を剥がします。この薄皮は硬く、加熱しても硬いままで食感を損なうため、必ず剥がしておきましょう。包丁の先を薄皮の下に差し込み、ゆっくりと剥がしていくと剥がれやすいです。焦らず丁寧に行うことが重要です。

2. 臭み取り(塩揉み・牛乳漬け・酢水漬け)

牛タン特有の臭みは、下処理でしっかり取り除くことが大切です。いくつかの方法がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

塩揉み

牛タン全体に粗塩をまぶし、手でしっかりと揉み込みます。塩の浸透圧により、余分な水分や臭みの成分が引き出されます。10~15分ほど揉み込んだ後、流水で塩を洗い流し、キッチンペーパーでしっかりと水分を拭き取ります。この作業を2~3回繰り返すと、より臭みが軽減されます。

牛乳漬け

ボウルに牛タンを入れ、ひたひたになるまで牛乳を注ぎます。臭み成分であるアンモニアは酸性のものに溶けやすいため、牛乳のタンパク質と反応して臭みが和らぎます。30分~1時間ほど漬け込んだ後、流水で牛乳を洗い流し、キッチンペーパーで水分を拭き取ります。牛乳の代わりにヨーグルトを使用しても効果があります。

酢水漬け

ボウルに水とお酢(米酢や穀物酢など)を適量(水1カップに対して大さじ1程度)加えて混ぜ、牛タンを漬け込みます。お酢の酸性が臭み成分を分解し、さっぱりとした風味になります。30分~1時間ほど漬け込んだ後、流水で洗い流し、水分を拭き取ります。お酢の風味が残りすぎる場合は、さらに水で短時間洗うと良いでしょう。

これらの臭み取りの方法は、単独で行うだけでなく、複数組み合わせることでより効果的です。例えば、塩揉みをした後に牛乳漬けを行うなど、ご自身の好みに合わせて試してみてください。

3. 筋切りと下味付け

厚切り牛タンは、部位によっては硬い筋が入っていることがあります。牛タンの繊維の方向を見極め、繊維を断ち切るように包丁で格子状に浅く切り込みを入れることで、火の通りが良くなり、食感も柔らかくなります。筋切りは、厚切りの場合に特に重要です。下味付けとしては、塩、胡椒、ニンニクのすりおろし、ハーブ(ローズマリーやタイムなど)を揉み込むと、風味が増し、さらに臭み消しの効果も期待できます。一晩冷蔵庫で寝かせると、味がしっかり染み込みます。

家庭で楽しむ!厚切り牛タンの本格レシピ

下処理が完了した厚切り牛タンは、様々な調理法で楽しめます。ここでは、家庭で簡単にできる、本格的な美味しさを味わえるレシピをいくつかご紹介します。

レシピ1:厚切り牛タンのシンプルステーキ

厚切り牛タンのポテンシャルを最大限に引き出す、最もシンプルな調理法です。素材の味を存分に堪能できます。

材料
  • 厚切り牛タン(下処理済み):適量
  • 塩:適量
  • 黒胡椒:適量
  • にんにく:1かけ(スライスまたはみじん切り)
  • バター:10g
  • オリーブオイル:大さじ1
  • お好みで:レモン、パセリのみじん切り
作り方
  1. 下処理済みの牛タンに、塩、黒胡椒をしっかりとすり込みます。
  2. フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱火で熱し、香りを引き出します。
  3. 牛タンを加え、強火で各面を焼き色がつくまで焼きます。厚みがあるため、側面もしっかりと焼きましょう。
  4. 焼き色がついたら、火を弱め、蓋をして中まで火を通します。竹串などを刺して、透明な肉汁が出てくれば火が通っています(内部温度65℃程度が目安)。
  5. 火から下ろし、アルミホイルで包んで5~10分ほど休ませます。これにより肉汁が落ち着き、ジューシーに仕上がります。
  6. 食べやすい厚さに切り分け、お皿に盛り付けます。お好みでバターを乗せたり、レモンを絞ったり、パセリのみじん切りを散らして完成です。

レシピ2:厚切り牛タンのグリル(オーブン・トースター活用)

フライパンで焼き上げるのが難しい場合や、より均一に火を通したい場合に便利な方法です。

材料
  • 厚切り牛タン(下処理済み):適量
  • 塩:適量
  • 黒胡椒:適量
  • にんにく(すりおろし):小さじ1
  • 醤油:大さじ1
  • みりん:大さじ1
  • 料理酒:大さじ1
  • おろし生姜:少々
作り方
  1. 下処理済みの牛タンに、塩、黒胡椒、にんにくのすりおろしを揉み込みます。
  2. 醤油、みりん、料理酒、おろし生姜を混ぜ合わせ、牛タンを漬け込みます(最低30分~1時間)。
  3. オーブンを200℃に予熱しておきます。
  4. 天板にアルミホイルを敷き、牛タンを乗せます。
  5. 予熱したオーブンで、表面に美味しそうな焼き色がつくまで20~25分ほど焼きます。途中で何度かタレを塗りながら焼くと、香ばしく仕上がります。
  6. 焼きあがったらアルミホイルで包み、5分ほど休ませてから切り分けます。トースターを使用する場合は、焦げ付かないように様子を見ながら焼いてください。

レシピ3:厚切り牛タンの煮込み(シチュー風)

じっくりと煮込むことで、驚くほど柔らかく仕上がる、家庭でできるご馳走レシピです。

材料
  • 厚切り牛タン(下処理済み):適量
  • 玉ねぎ:1個(くし切り)
  • 人参:1本(乱切り)
  • じゃがいも:2個(大きめに切る)
  • マッシュルーム:5~6個(半分に切る)
  • にんにく:2かけ(みじん切り)
  • ローリエ:1枚
  • 赤ワイン:200ml
  • 水:400ml
  • コンソメ顆粒:小さじ2
  • ケチャップ:大さじ2
  • ウスターソース:大さじ1
  • 塩:適量
  • 胡椒:適量
  • 小麦粉:大さじ2
  • バター:10g
  • サラダ油:大さじ1
作り方
  1. 下処理済みの牛タンに、塩、胡椒、小麦粉をまぶします。
  2. 厚手の鍋にサラダ油とにんにくを入れて弱火で熱し、香りを引き出します。
  3. 牛タンを加え、各面に焼き色がつくまでしっかりと焼きます。
  4. 玉ねぎ、人参を加えて炒め、しんなりしたら赤ワインを加えてアルコールを飛ばします。
  5. 水、ローリエ、コンソメ顆粒、ケチャップ、ウスターソースを加えて混ぜ合わせます。
  6. 煮立ったらアクを取り、蓋をして弱火で1時間~1時間半ほど煮込みます。
  7. じゃがいも、マッシュルームを加え、さらに20~30分、野菜が柔らかくなるまで煮込みます。
  8. 塩、胡椒で味を調え、最後にバターを加えて溶かし、全体に混ぜ合わせます。
  9. 器に盛り付け、お好みでパセリなどを散らして完成です。

厚切り牛タンを美味しく仕上げるためのコツ

家庭で厚切り牛タンを調理する際に、さらに美味しく仕上げるためのいくつかのコツをご紹介します。

  • 厚さに応じた火加減:厚切り牛タンは、火の通りに時間がかかります。強火で表面を香ばしく焼き付け、その後は弱火でじっくりと中まで火を通すことが大切です。焦げ付きそうになったら、アルミホイルをかぶせるなどの工夫をしましょう。
  • 休ませる時間:ステーキや焼肉にした後は、必ずアルミホイルで包んで数分休ませることで、肉汁が全体に均一にいきわたり、ジューシーに仕上がります。
  • 厚さの均一性:厚切り牛タンでも、厚さが均一でないと火の通りにムラが出やすくなります。なるべく厚さが均一なものを選ぶか、厚さに合わせて切り分けるなどの工夫をしましょう。
  • 調味料の活用:塩、胡椒といった基本的な調味料はもちろん、ニンニク、ハーブ、スパイスなどを活用することで、牛タンの旨味を引き出し、風味豊かに仕上がります。
  • 下処理の丁寧さ:繰り返しになりますが、臭み取りと薄皮の剥ぎ取りは、美味しい牛タンを調理する上で最も重要な工程です。焦らず、丁寧に行いましょう。

まとめ

家庭で本格的な厚切り牛タンを味わうことは、決して難しいことではありません。丁寧な下処理を行い、ご紹介したレシピを参考に、ぜひご家庭で特別な食卓を演出してみてください。ジューシーで噛み応えのある厚切り牛タンは、お祝い事や家族団らんの食卓を一層豊かにしてくれるはずです。